建築士の設計・工事監理契約、書面が「すべて」対象に 2027年4月施行
建築士が行う設計や工事監理の契約について、これまで書面での契約が義務だったのは延べ面積300㎡超の新築などに限られていました。改正建築士法(令和8年法律第74号)は、この範囲を、面積などを問わず、建築士が行う設計または工事監理の委託を内容とするすべての契約に広げます。国土交通省は2026年10月6日、この規定の施行日を2027年(令和9年)4月1日とする政令が閣議決定されたと発表しました。公布は10月9日と発表されています。茨城県で注文住宅を建てるときの設計契約や工事監理契約の結び方に関わる変更なので、何が変わるのか、いつ変わるのか、契約の前に何を確かめるかを、国交省の資料に沿って整理します。個別の契約の法的な判断ではなく、制度の紹介です。
書面契約の対象が「300㎡超」から「すべて」に
国交省の改正法の概要資料によると、現行の建築士法は、平成26年の改正で、延べ面積300㎡を超える新築などの設計・工事監理の契約を、書面での契約締結の対象としています。改正法は、これを、面積等を問わず、設計または工事監理(いずれも建築士が行うものに限る)の委託を受けることを内容とするすべての契約に拡大します。法律の要綱では、契約書の相互交付義務の対象を、「延べ面積が300平方メートルを超える建築物の新築等に係る設計受託契約又は工事監理受託契約」から、延べ面積等を問わず、建築士が行う設計または工事監理に係るすべてに拡大する、と書かれています。一般的な戸建て住宅の延べ面積は300㎡を下回ることが多いため、これまで書面契約の義務の対象外だった契約の多くが、対象に入るというのが筆者の見方です(資料に、この点を述べた記述はありません)。
見積書の作成は、努力義務として明記
もう1つの柱は、見積書です。概要資料によると、契約の透明化を図るため、建築士事務所の開設者に対して、見積書の作成等について努力義務を課します。あわせて、委託代金の適正化を図るため、当事者が契約を結ぶにあたって、見積書の内容等を考慮するよう努めるものとされています。義務ではなく努力義務ですが、設計・工事監理の報酬について、見積書で内容を示すことを、法律に書き込む形です。
施行は2027年4月1日、政令は10月9日公布
国交省の10月6日の発表によると、改正法のこの規定は、公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日に施行するとされていました。今回の政令で施行日が令和9年4月1日(木)と定められ、政令は令和8年10月9日に公布されました。あわせて、施行に必要な建築士法施行令の改正も閣議決定されています。法律の要綱によると、契約の適正化に関する部分は公布から1年以内、それ以外(在学中の受験の導入、二級・木造建築士の実務経験の短縮など)は3年以内と、項目ごとに施行時期が違います。今回施行日が決まったのは、書面契約と見積書に関する規定です。
注文住宅の契約前に、確かめておきたいこと
以下は、国交省の資料を踏まえて、筆者が整理した確認点です。公式のチェックリストではありません。
- 自分が結ぶ契約が、建築士が行う設計または工事監理の委託を内容とするものかどうかを、契約の前に確認します。
- 施行日の2027年4月1日以降は、対象の契約は書面で交わすことになります。契約書が交わされ、控えが渡されるかを確かめます。
- 見積書が示された場合は、設計・工事監理の報酬が、何に対するどの金額なのかを確認します。見積書の作成は、法律上は努力義務です。
- 契約の時期が2027年4月の前後にまたがる場合は、どの規定が適用されるか、契約日などを含めて、建築士事務所に確認します(経過措置の詳細は、今回の資料では確認できていません)。
設計・施工一括の請負契約が、この改正の対象になるかどうかは、契約の内容(建築士が行う設計や工事監理の委託を内容とするかどうか)によって変わるため、この記事では判断しません。心配な場合は、建築士事務所や、都道府県の建築指導担当窓口などに確認してください。
書面と見積書で、何が確かめやすくなるか
今回の改正で、延べ面積の小さい住宅でも、建築士に設計や工事監理を頼むときは、契約書を交わすことが前提になります。施主の側では、署名の前に、設計の範囲(どの段階の図面までか)、工事監理のやり方、報酬の額と支払いの時期が書かれているかを、事務所と一緒に読み合わせておくと、あとで食い違いに気づきやすくなりそうです。見積書は努力義務なので、どの事務所も同じ形式で出すとは限りません。それでも、報酬の算定の根拠が示されていれば、複数の事務所の金額を比べる手がかりになるでしょう。施行日の2027年4月1日より前に結ぶ契約でも、書面で交わしたいと事務所に伝えておくのは、一つの方法だと考えます。この記事は、特定の会社や事務所をすすめるものではありません。
参考にした公式情報
- 国土交通省「改正建築士法の施行に伴う関係政令を閣議決定」(2026年10月6日)
- 国土交通省「建築士法の一部を改正する法律の概要(令和8年法律第74号)」
- 国土交通省「建築士法の一部を改正する法律 要綱」
2026年10月18日時点の情報です。